1955年、吉川英治原作、溝口健二監督の作品です。平安時代末期、貴族との激しい抗争の中で台頭してきた武士階級の平清盛が自らの出生の秘密に悩みながら成長していく姿を描いています。主演、平清盛には市川雷蔵。溝口監督初のカラー作品でした。

これは吉川英治の同名歴史小説を3部作で映画化した大河シリーズの第1作であり、その後の第2作、第3作も溝口健二監督が指揮する予定であったのが、監督の急死により、第2作『新・平家物語 義仲をめぐる三人の女』、第3作『新・平家物語 静と義経』はそれぞれ衣笠貞之助監督、島耕二監督が担当しました。溝口健二監督によるものが見たかった、と大いに悔やまれます。

邦画は、私が知っている範囲ですので例外はあるとは思うのですが、どれもこじんまりしておりハリウッド映画のようなスペクタクル映画がなく、黒澤明監督の『影武者』にしても戦闘シーンはほとんどなく、そういうスケールの大きなドラマに飢えている時に見つけた古い映画でした。

まず自然光で撮影したという『色彩』が、今時のギラギラしたのとは違い、本当に美しいです。そして今まで『平家物語』で大悪人として描かれ嫌われていた平清盛が人気者になったきっかけの作品でもありましょう。若き清盛と時子(将来の妻)とのやり取りなど実に初々しいです。当時のことですから、時代考証など相当細かにされていると思いますが、武家の立場や様子、貧乏貴族や庶民の様子など見ていてとても興味深い。また役者の立ち振る舞いがしっかりしており品があり、ちゃんと『日本人』しているのが流石です。

ここには当時強大な権力を持っていた比叡山延暦寺の僧兵が出てきますが、神輿に祀られた天照大神の鏡を、清盛の矢に射抜かれただけで恐れおののいて逃げ帰ってしまう、などという場面を見ると、実に『大和民族』で、アメリカの暴力スペクタクルと比較して、暴力ではあるのですが、あまりに優しく、微笑ましいというか、逆に呆気にとあっれてしまいます。

私が個人的に大好きだったのが、あまり出番はなかったのですが、それでもクールなダンディぶりを発揮していた夏目俊二演じる、鳥羽上皇でした。彼のシーンを何度も巻き戻して見ることができるというのはDVD冥利につきますね。

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